歓びを歌にのせて

「私の人生は、今こそ私のもの」
聖歌隊のメンバーのひとりガブリエラが歌う歌詞の一節。
この言葉にこの映画が凝縮されているのだと思う。
そう、人生肯定の映画。

ガブリエラのこの歌を聴きながら、いかんと思いながらも泣いてしまった。

ガブリエラは夫の暴力に怯えて暮らしていて聖歌隊の練習にくるのもやっとなのだが、家をでる決意はできないでいる。夫が怖くてソロでこの歌を歌うこともできないと言っていた彼女が、そんな彼女が今こそ私の人生は私のものって歌うのだ。どう考えても感動するところなのだ。

夫の暴力に怯えているのも私の人生、でもこの人生も私のもの。だからもっと私のものにするのだ、という肯定。

ガブリエラを演じているのはスェーデンの国民的歌手だとのこと。
この歌が鳥肌がたつほどいい。
だからこのシーンをみただけてもう満足。
1日かけてル・シネマに耐えたかいがあったというもの。

映画の感想とはそれるが、私はル・シネマが苦手。
スノッブな雰囲気がいやなのだ。
整理券もきらい。私は見たいときに見たい。たとえ立ち見だろうがなんだろうが。
でも絶対に立ち見はさせてくれないし、無常に断られるのだ。
よっぽどでないと行かないのだが、ここでしか上映していないのだからしょうがない。
13時の回を見たくていったのに、もう19時の回の整理券しかとれなかったし。
まあ読みが甘いといわれればそれまでなのだが。
で、13時に19時の回の整理番号をもらい、いったん家に帰り、夕飯の買い物をして段取りして19時の回に見に行く主婦なのだと開き直る。
そんな努力も報われる、感動のシーン。

主人公のダニエルは8年先までスケジュールが埋まっているという国際的にも成功した指揮者だが、そのダニエルはヒーローじゃないのだ。ヒーローとしては描かれていないところもいいところ。
ガブリエラの暴力夫にはぼろぼろになぐられっぱなしだし、牧師にはみだらな行為をしたと言われっぱなしで反論するでもなく、いらいらするくらいされっぱなしなのだ。
でも、聖歌隊のメンバーの顔写真をポラロイドでとってピアノに並べ、メンバーそれぞれの音を聴いて、それぞれの一番の音をピアノで見つけていく、その過程の幸せな時間をダニエルと共有でき、メンバーが聖歌隊の練習の中で自分の音を見つけ身体で感じていく過程につながっていく幸せな時間も共有できるのだ。

性についての描き方も自然だったと思う。

誰でも自分の人生の中では主人公、、、って、さだまさしの歌だった・・・
あ・・・
ってことは忘れて・・・。060110_161001_1

本日のショット。

猫には猫の人生がある。