出世ミミズ
アーサー・ビナードさんが日本にくるきっかけとなった、
<からゆき>のおサキさんと<JAPANゆき>のぼく
というエピソードを読んで、胸がギューっと切なくなった。
不意打ちだった。
日本か中国かと悩んでいた彼は「ジャパン・センター」で日本の映画を見たそうです。
最初に見たのが「セブン・サムライ」。日本語が全く聞き取れず、その次にみたのが「おサキさん」がでてくる映画。
おサキさんは貧しい家に生まれ、からゆきさんとしてボルネオにつれていかれ、日本に戻ってからは差別されて・・・
ここを読んでいる頃からどきどきしてきた。
サンダカン八番娼館だ!と。
「おサキさんを演じた女優は、実にすごかった。とても演じていると思えず、ほんとのおサキさんだと信じきった。そして、彼女が住んでいる茅屋、その黄ばんだ障子とちゃぶ台・・・・・・おサキさんと話がしたい、あの家でちょっと暮らしてみたい。そんな気持ちがした」と続いている。
ここを読んで胸がつまって涙がでてきた。
泣くところではないと思ったから不意打ちだった。
昔のことを無理やり思い出させられた感覚だった。悪い意味ではなく。
田中絹代。
すごく好きな女優さんで、この映画も大好きだったのに、もうずいぶん忘れていた。
ビナード氏の文章を読みながら、映画の記憶がよみがえってきた。
サンダカンを見て、日本行きを決めたビナード氏。
きっといい人に違いない、
と、そんなことを思った。
ビナード氏は来日6年目に、サンダカン八番娼館・望郷の美術監督の木村威夫さんにお会いしたそうです。