「うつせみ」
いやよ、いやよも好きのうち、
って、歌があったっけ。
そういいながらキム・ギドクを見る。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
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予備知識なしに見るに限る。
ギドクの映画で、物語の先を見たいと思いながら見たのは初めて。
空き家、留守宅を見つけてはそこに寝泊りするテソク(ジェヒ)。
住人のように料理をして、洗濯をして、掃除をして、風呂に入って、もちろん音楽も聴くし、とにかくまるで自分の家のように過ごす。泊まった家の壊れているものがあれば(子供のおもちゃから、体重計、時計、オーディオコンポまで)それを修理する。洗濯は洗濯機を使わない。必ず手洗いで、ごしごしと。マニュアルのような一連の流れがある。ある日留守宅と思って入った家にいたのがソナ。夫に拘束され暴力をうけ孤独だったソナとテソクが出会い、逃避行がはじまる。
二人のシーンでは一切セリフがない。でも言葉がないという不足感はまったくない。気持ちいいほどに。留守宅を見つけては寝泊りするのは二人でも同じ。そしてマニュアルのような一連のことを繰り返す。
ギドクの映画なのになぜいつになく心地よくこの映画を見たのか。その理由は留守宅に忍びこんでは繰り返される一連のマニュアルのような流れにあるのだと思った。この動作はマニュアルだから、何も望まないのだ。何が食べたいとか、この服が欲しいという物欲も、留守宅の持ち主が帰ってこないように願うということすら二人は望まない。
だから見つかってしまう。
それからのテソク、というかジェヒの変化に目を見張らされる。
ゾッとするというより、ワクワク感のほうが勝る。
そして夢か現かというラストは毒があるのに宗教的。
宗教がそもそも毒なのかも知れないと思う。
怪傑春香のモンリョンだったジェヒがねぇーー。ゾクゾクするほど素晴らしかったです。
いまさらだけど、怪傑春香の保存版を作らなかったのが悔やまれる。