「僕らのバレエ教室」


最近は予備知識なしに映画を見ることが多い。
だからいい方向で期待を裏切ってくれる映画は最高です。
まあ、私の妄想なんて典型的すぎて想像力に欠けるからね。


「僕らのバレエ教室」は見事に裏切ってくれましたよ。
ユン・ゲサンやイ・ジュンギらがつぶれかけたバレエ教室を見事によみがえらせるというかなりつまらない妄想を。


この映画、先が見えない悩み多き高校生の「大人の階段のぼる」話で、コメディのようなタイトルを持っているくせに、明るい要素はほとんどないし、恋愛だって湿っぽい。
ミンジェ(ユン・ゲサン)はパイロットの父親の期待する航空大学は落ちるし、仕事で留守がちな父親がいないときに死んだ母親のトラウマをまだ抱えている。ギテは高校3年で親もなく病気の弟を抱えてバイトに明け暮れているし(たった一人で弟の面倒を見ていかなければならない悲惨な状況なんだけれど、その弟にものすごく愛情を注いでいるのが切ないです)、スジンは家を離れるために犬にも触れないくせにチェジュ島の大学の獣医学科を選ぶというひねくれ加減。
おまけに、親戚の集まりではしつけがなっていない、箸も上手に使えないのか、母親代わりの叔母に感謝しろとか言いたい放題のミンジェの祖母や、白血病の子どもは見ているだけで病気が移りそうだからと団地で署名運動して子どもを追い出す住民。ギテの弟も追い出される。それに反発したところで何にも変わらない。そんな閉塞間バリバリの状況で、なんの役にもたたないバレエをやっている彼らがかわいいです。

お金のことしか考えていない金の亡者みたいに言われているギテが、ミンジェのところにやってきてものすごくうれしそうに「俺、金持ちになったんだ!」と喜ぶシーンがある。「泥棒でもしたのか、落ち着け」というミンジュに「父さんの保険金が入ったんだ。これで弟の病院代が払えるんだ」と。
飲んだくれでひき逃げされて死んだ父親の保険金で病気の弟の病院代を払うんだと喜ぶギテを黙って抱きしめて泣くミンジェ。胸が締め付けられる。


最後のバレエの発表会は、これはもう単純に楽しむべし。
クラシックからポップに切り替わるその高揚感。
いいねえ、いいねえ。

地味で湿っぽいけどいい映画でした。
後で知ったんだけれど監督は「ナヌムの家」のビョン・ヨンジュです。