「勝手にしやがれ」


不思議なドラマだった。


普通なら涙もの展開になりそうな難病物のストーリーを、淡々というよりも、‘あっけらかん’いうのが合っているかもと思えるように描いたのは本当に素晴らしいの一言。
それから、前科2犯のスリと金持ちのお嬢様との恋愛も、「ありえないけど、ドラマだからあり?」みたいな下世話な予想を見事に裏切って、ボクスの「心」を最初に好きになってしまったからとギョンに告白させるなんて、あまりにも直球じゃないですか。そんな「心」と「心」で魅かれあった二人がミレに対する二股の罪悪感で悩んでも(ドングンのボクスが二股かけるというのも笑えるが)、ここでは嫉妬すらも相手を思いやる気持ちには勝てず、切ないけれどけっしてドロドロした関係には進展していかない。それに、スリの道に戻りかけたコブンを救いたい気持ちからボクスが身代わりになってつかまってしまうところも、韓ドラの常套でいけば、その誤解を招くような現場を見た恋人のギョンがボクスがまた昔のスリに戻ってしまったと誤解してうじうじと悩み、別れるという展開になりそうなものだが、心でつながっているギョンはどこまでもボクスを守るという展開にでるのだ。ドラマはどんどんと深くなっていくのに反して見ている私は少しずつ気持ちが晴れていくのだ。ボクスがギョンに病気のことを告白するシーンも、これ見よがしな盗み聞きや他人から聞かされるということもなく、ギョンの質問に淡々とボクスが答えるというストレートな告白で行われ、ああ、こんな風に言われたらこう受け止めるしかないよなあという自然な展開にまたも私は心を奪われてしまった。


脳腫瘍になって、ギョンに出会って、生き方を変えたボクス。
生き方を変えるってことは世界を変えるってことさ、というボクスの言葉(セリフに)がすごく短いセリフだけれど、このドラマの核の部分なんだと思う。「勝手にしやがれ」というタイトルはものすごく逆説的で、ボクスの生き方は、ギョンもはじめとして、回りの人間の生き方を結局は変えていくことになる。周りの人間たちがどんどん自立を始めるのだ。ギョンもギョンの家族もミレもコブンも。


面白くてやみつきになるドラマ。


先週までみていた「宮」のうじうじ感から一気に晴れ晴れとして気分爽快!