東京タワー

オカンがどんな服をきているのか、どんなふうに料理を作っているのか、どういうふうにウサギの世話をしているのか、いろんなことがなぜだかはっきりとした映像で迫ってくる、そんな本だった。東京に出てきてリリーさんと暮らし始めてからのオカンの映像が特にくっきりと迫ってくる。中でも一番印象に残っているのが(私の頭の中の映像だけど)、リリーさんの家に来る人にはオカンが必ず食事を作ってだしてあげるのだけれど、中にはどうしてもそれを食べない、食べてあげない、何か変なものを見るように絶対に口にしない人がいる(それは若い女性なんだけど)というところ。そんな女とオカンを前にして原稿をかいているリリーさんの顔。一口くらい食ってやれよ、って思っている顔。悔しさ、腹立たしさ、哀しさでまぜこぜな気持ちが文章になっていて、それと同じ感情が沸いてきてたまらなくなった。
だから東京タワーが心に残って消えないのだと思う。