大統領の理髪師

激動の時代を生きた親子のヒューマンドラマとしてみたらそれは素晴らしい作品だと思うのだが、「下痢」で始まるスパイ探しのエピソードは密告という「赤狩り」であり、「赤狩り」のシーンを他のエピソードと同等に淡々と描いていることがとても気になってしょうがないのだ。しかも、子どものナガンの純真さが、残酷な拷問のシーンすらどことなくファンタジー化させてしまう演出に違和感を覚えてしまう。


ソン・ガンホの無学だが愛情あふれる父親役は相変わらず素晴らしいのだが、ラストの奇跡を手放しで喜ぶことはできない。