「武士の一分」


結局最後まで三村(キムタク)が魅力的に見えず、感情移入もできずに終わってしまった。

失明したあとの失意も妻が弄ばれた事を知った後の怒りや哀しみも何もかも伝わってこない。

愛し合っている夫婦なら、長年連れ添った夫婦なら、しかも小さい頃から一緒だった妻だったのなら、彼女の苦しみを思いやることこともできただろうに、即刻離縁などという三村には、全く。しかも失明した自分が禄を取り上げられずにいることが妻が身体をかけて頼んだ島田の口ぞえなどではなく、藩主の温情だと知ったあとに島田と果し合いをするなんぞ、まったくもって、その前にすることがあるだろうと時代考証も何も考えずに思ってしまう私がいけないのかもしれないが。

孤児で小さい頃から三村の妻となることを願ったいたという加世。そして願いがかなって三村の妻となった今があるわけで、孤児と三村の結婚には身分のことやらなにやらきっとそれなりのドラマがあったはずなのに、二人の昔のエピソードのひとつもないというのが残念。そんなものがひとつでもあったらちょっとだけ三村の愛も信じてみることができたのかもしれない。

そういうわけで、果し合いはどうしてもしなければいけないものなのか、やむを得ないことなのかということが絶対的に伝わってこない。妻がいないという切なさも全く伝わらない。

山田監督にしては、どうなのよ。
感情の動きを追うというよりも、今回はストーリーを追っているように思えてしまってしょうがないのだ。食事のシーンはラストにつながるだろうなあというのは予想できたからしつこく食事のエピソードをいれているのはわかるけれど、そして、くどいようだけれど、それよりも夫婦の愛情がもっとよくわかるエピソードを!