アントニオ・ガデス氏、死去

舞踊家、振付師、あのアントニオ・ガデス舞踊団のアントニオ・ガデス氏が亡くなりました。67歳でした。胃がんだったそうです。


カルロス・サウラ監督の映画「カルメン」でアントニオ・ガデスを知り、それからは来日公演のたびに彼の舞台を見続けました。「カルメン」、あのハバネラのシーンが好きでした。「血の婚礼」、息詰まるほどの緊張感のある舞台でした。いつも見終わったあとにぐったりしたのを覚えています。「アンダルシアの嵐」、アンコールのカーテンが上がった後の舞台にあったのは1枚の絵でした。権力と闘う群衆の絵です。踊り手全員がその身体を使って表現した静止画です。何度も目に焼き付けました。こんなアンコールがあったんですね。


ドンキホーテ」を舞踊で演出、振り付けをしたいという夢はかなわなかったのですね。
ガデス氏が踊らなくなってからずっと「ドンキホーテ」の舞台のニュースが届くのを待っていました。ガデス氏が演出、振付をするドンキホーテを必ず見に行こう!と。たとえどこの国であってもと、思っていました。


もうガデス氏の舞台を見ることは二度とかなわぬことになってしまったけれど、彼と同じ時代に生きて、彼の舞台を、その素晴らし舞台を何度も見ることができたことは私の誇りです。


葬儀は故人の遺志により行われず、遺体は火葬され、その灰はガデス氏が生前愛したキューバの地にまかれるそうです。