わたしを離さないで

わたしを離さないで

どこに連れていこうとしているのか分からないままに読み続けた。
だから、連れて行かれた先で戸惑ったまままだ立ち直れないでいる。
淡々としているのに、余韻が強烈すぎて。


ある女性の回想録で、子供時代を過ごした施設の思い出を淡々と語っている。
女性は介護人で、今は提供者の介護をしているという。
彼女が育った施設は孤児院のようでもあり、ある事情があり親と離れて暮らしている様でもあり、そこは詳しくは語られない。何か秘密がありそうだけれど、子供たちの様子は普通の子供たちと変わらないし、いじめがあったり、女の子同士はグループを作ってはその中でもめたり、嫉妬したり、ケンカや仲直りがあって、「秘密」に少しずつ近づいていくようではあるけれど、でも語られるのは、主人公キャスの、あの時何があって、どう思ったのだという思い出が淡々と語られていくだけ。


普通の成長物語、普通の思い出話であればあるほど、真実に近づくにつれその残酷さが際立っていく。
でも最後まで淡々としたペースが守られていて、
「でもここに生まれたわたしたちには人生の全部です」という。
真実を知っても、でもこれが私の人生のすべてというのだ。


怒っていいのか、哀しいのか分からない。