「通訳/インタープリター」


通訳/インタープリター

通訳/インタープリター


タイトル買いだった。
なんの予備知識もなしに、もっと違う話を想像して読み始めたのだが、最後には深い哀しみに襲われた。物語の最後でタイトルの「通訳」という言葉に含まれた深い意味が明らかにされるのだ。


主人公のスージーの職業は法廷通訳である。英語のできないコリアンがトラブルを起こしたときの通訳をしている。スージーは韓国生まれでアメリカ育ちのコリアン・アメリカンである。両親が彼女が小さいころに韓国からアメリカに移民してきた。その両親は5年前に何者かに銃で撃たれて殺され、犯人はまだ捕まっていなかった。スージーは法廷での仕事の際に両親の殺人事件の関係者に偶然出会う。何故両親が殺されたのか、調べ始めた。


ここでもまだ通訳というのはスージーの職業だとしか思わなかった。


両親の死の謎に迫っていく過程でスージーは断絶していた姉の失踪を知る。
どうして姉はいなくなってしまったのか。
どうして姉は自分を寄せ付けなかったのか。


姉は小さいころから英語のできなかった両親の「通訳」をやらされていた。
その役目は何故だか自分にはまわってこなかった。いつも姉の役目だった。
何故だったのか。


その事実に触れたとき、姉の苦しみを知ったときに、通訳の意味の深さに気づかされる。


弱者がさらに自分より弱い立場の人を利用し、攻撃してしまう事実に呆然としてしまう。