弓

これでキム・ギドクは何本目だろうか。
私はこの「弓」がギドクのこれまでのベスト1なのではないかと思う。
私が一番好きなギドク映画だ。


海に浮かぶ船の上で暮らしている老人と少女。
少女は老人がどこからか連れてきたらしい。
そして少女が17歳になったら老人は少女と結婚しようと思っているらしい。
そういうことがだんだんと分かってくる。
老人は時々釣り人を船につれてくる。それでいくばくかのお金を稼いでいるらしい。
老人と少女は一切言葉を発しないが、釣り人らの会話の中からそういう二人の関係が分かってくる。

老人のしていることは、誘拐であり監禁であることは間違いないのだが、
少女の17歳の誕生日の日に向けて、カレンダーに×印をつけていくところや、いそいそと結婚式の準備のための品物を揃えていくシーンはどことなく滑稽にも見えてしまい、この話はどういう方向に進んでいくんだろう、ギドク監督はどんなエンディングを用意しているんだろうかと、いつになく期待感一杯である。


そして、「そうきたか!」のエンディング。
実は心の中で映像では決して「見たくない」シーンを想像していたが、そんな想像なんかぶっ飛ぶようなエンディングが用意されていた。見事な開放感。


ああ、これ、何かに似ている。
そういう感覚が残っていた。
それが、昨日わかった。

つい最近読み終えたばかり「百年の孤独」に似ているのだ。
シーツにくるまれて天に昇って消えていったレメディアスの話。
あの不思議な感覚に。


ファンタジーのようでいて、説得力がある。