「アイルランド」

今年最初の韓国ドラマは「アイルランド」にすることにしました。
脚本のイン・ジョンオクさんにとっても興味があるんですよ。
勝手にしやがれ」の脚本の方です。「アイルランド」もイ・ナヨンが出ていました。



やっぱり想像どおり不思議なドラマでした。ストーリーで話を転がさないんですよ。あくまでも主人公たちの心の動きだけを追っていくという、かなり大胆で危険な方法で話が進みます。


ジュンア(イ・ナヨン)とグク(ヒョンビン)は夫婦で、ジェボクとシヨンは同棲している。だけれど、ジュンアとジェボクが出会ってしまい、お互いに愛し合ってしまう。いわゆる不倫というやつになり、二人の関係をグクも知るところとなるが、グクは二人を愛するジュンアを受け入れるというし、かたやジェボクはググは自分にとっての生きていくうえでのお手本であり大事な人だからジュンアとグクが幸せなら、グクがジュンアを幸せにしてくれるならこれ以上の関係は望まないというし、そんな三角関係が続いている間にシヨンがグクを好きになり、グクもシヨンのことが気になる存在になるというおかしな四角関係になりどんどん話がこんがらがっていく。


四角関係になりながらも全くドロドロしないのは、お互い(4人)がそれぞれを大事に思っているからで誰も意地悪をしないし、陥れることもしない。それでも日常のエピソードを重ねることで、それぞれが自分の抱えている悩みや痛みを乗り越えることで関係が徐々に変化していく。これが通常のドラマだと主人公たちは「揺れる」のだけれど、イン・ジョンオクさんのドラマでは、主人公たちは「揺れる」んじゃなくて「考える」。そこが違うのだとアイルランドをみて思った。だから主人公たちが立ち止まることがあっても、見ているほうはいらいらもしないしただ待っていられるのだと思う。


印象に残ったセリフがあった。


ずっと映画のオーディションに落ち続けているシヨンを慰めるためにジュンアが話したシャロン・ストーンの話。


ジュンア:シャロン・ストーンはね、
シヨン :シャロン・ストーン
ジュンア:そう
ジュンア:シャロン・ストーンは遅咲きでしょ?
     若い頃 オーディションを
     受けまくったそうよ
     あるときは美人すぎると言われて不合格に
     あるときはブサイクだといわれて不合格に
     だからどうにもできなかったみたい
シヨン :それで
     なぜ売れたの?
ジュンア:知らない 
     それは聞いていない
     どう成功したかは聞いてないの
シヨン :何それ
     話のポイントはどこなのよ
ジュンア:それがポイントよ
     誰だってそういう時期があるの
シヨン :私もそういう時期だって?
ジュンア:うん
     私もあなたもわかるときが来るわ
     ずっとこのままか
     そういう時期なのか

シヨンに話しながらもジュンアが考えていたのは、自分自身のことでもあったのだと思います。どうにもできない時期とは彼ら4人の「今」のことじゃないのか、「アイルランド」は彼らの「そういう時期」を語った話なのではなかったのかと。


何故「アイルランド」なのかというと、ジュンアは3歳でアイルランドに養子に出されたから。アイルランドの養母と兄がIRAであったため、その殺害の現場をジュンアは見てしまった。その上、自分は関係ないと逃げてしまったことで家族を殺してしまったというトラウマを抱えている。ドラマの要所要所でダニーボーイが流れるのもまた印象的でした。(ミラーズクロッシングを思いだした)


おまけのようだけど、このドラマのヒョンビンがかなりいいです。
「キム・サムスン」では魅力を感じなかったけれど、このドラマのグク(ヒョンビン)が‘クールだけれどたまに見え隠れする弱い部分と繊細な感情がないまぜになった表情’をするとキュンキュンしますよ。どちらかというとグクに肩入れしてみていたので、私的には最後はちょっと不満なんだけれど、ドラマとしてのラストは納得できるラストだと思います。