「美しき野獣」

向こう見ずでワイルドな刑事ドヨン(クォン・サンウ)と冷静な検事ジヌ(ユ・ジテ)が同じ敵、ガンジン(実業家を装い政界に進出をもくろんでいるやくざの親分)に挑むという話。



3年前の殺人事件とドヨンの弟の殺人の関係がわかってくる様子やアクションシーンやフィルムのざらざらした質感などかなりノワールな雰囲気たっぷりなのだが、どうしても感情はついていかない。母親や弟にやさしく寄り添うドヨン、「俺たちは本当に運がないなあ」と母親と涙ながらに話すドヨンと仕事場での感情の高ぶりや乱暴などとがどうしても結びつかない。ドヨンがどういう風に育ってきたのか、どういう過去があって、どういう感情を持っているのかなんかが全くわからない。役に深みがないというのか、それはサンウの演技のせいではなく、しっかりと観客をつかむエピソードのひとつも書いて欲しいというところだ。だからラストにドヨンのとった行動の根っこに何があるのかがわからないままになってしまった。私の理解不足か。それに比べると冷静で規範にのっとった行動をすることを基本にしているジヌが後半になってどんどん感情を爆発させていくその変化は納得できる。二人が友情を築いていくシーンももっと欲しかったなあ。